梶原耕藝

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2023.04.15|農家の日常

トマトの味の変遷と思い出補正

熊本のトマト農家、梶原耕藝です。

うちのトマトを食べたお客様から、

「昔食べたトマトの味を思い出した」

という感想をいただくことがあります。

自分は30年以上、我が家でつくったトマトを食べ続けてきたせいか、流通してきたトマトの味がどう変わってきたのか、詳しく覚えていません。

なので、お客様からいただく感想の理由はどこにあるのだろう?

・・・と、ちょっと考えてみました。

1つは、品種が変わったこと。

昔は、ファースト系といって、青みが強くて酸っぱくて、実のお尻が尖っているトマトが主流でした。

差別化のために、今あえてつくっている農家もいます。

1980年代に入ると、桃太郎という新しい品種が開発されると、甘みと酸味のバランスがよくて棚持ちが良い桃太郎に切り変わっていきました。

今、流通しているトマトのほとんどは桃太郎系のトマトです。

ちなみに、うちでつくっている大玉トマト「りんか409」は、桃太郎よりも病気に強く実がしっかりしている特徴から、全国でも広く栽培されている品種です。

2つめは、栽培環境や時期が変わったこと。

昔はトマトも露地栽培が主流だったろうし、夏に採れたものだけを食べていたのだろうけど、ハウス栽培が普及して、加温すれば冬でもトマトを栽培することができるようになりました。

当然、夏と冬では気温も湿度も日射量も変わってくるので、トマトの味にも違いが出てきますよね。

あと、昔は完熟したトマトをそのまま食べていたけど、現在は流通の都合で、棚持ちをよくするために完熟手前で収穫している影響もあるかもしれません。

3つめをあげるとすれば、「思い出補正」も関係あるかも。

人間は、昔の記憶を美化したり、良い記憶だけ残そうとする傾向があります。

「昔は良かった・・・」ってヤツですね。

小さい頃、夏休みに行った田舎のばあちゃんちの畑でトマトを丸かじり・・・という、最高のシチュエーションも相まって、美しい子どもの頃の記憶として残っているのも、大きいんじゃないかなーと想像します。

やっぱ、採れたてをそのまま食べるのが一番おいしいですからね。

というわけで、自分が考えるかぎりでは、品種の違い、栽培環境の違い、思い出補正の3つが、昔と今のトマトの味の違いにつながっているのかなーと思いました。

現在、トマトの品種は、多くの人の努力によって、美味しさと栽培しやすさのバランスがとれたものが生まれています。

「昔食べたトマトも美味しかったけど、このトマトはもっと美味しいね」

そう言ってもらえるトマトをつくるのが、自分の目標です。

梶原耕藝 代表梶原甲亮(かじわらこうすけ)

1976年生まれ(43歳)。熊本県山都町在住。代々続く農家の7代目。九州大学法学部政治学科を卒業して熊本県庁に就職。子供が生まれ、食への関心が高まると共に「安心安全な食べ物を届けたい」「農業を夢のある仕事にしたい」という想いでUターン。現在、3兄弟の父親として日々学びながら農業を取り組んでいます!

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