梶原耕藝

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2025.05.14|農家の日常

Q.トマトはなぜこんなに脇芽が生えてくる?

トマトを育てていると、気がつけばあちこちから脇芽(わきめ)が伸びてきます。

せっかく主枝がまっすぐ育っているのに、あっという間にわきから新しい芽が出てきて、「また取らなきゃ」と思うこともしばしば。

時には腹も立ちます。

なぜトマトはこんなにも脇芽を出してくるのか?

結論から言えば、トマトは

“生き延びるために枝を増やす性質”

をもっているから。

トマトはもともと、南米アンデスの乾燥した高原地帯が原産地。

そこでは雨も少なく、土地もやせているため、限られた水と養分を効率よく使うために、「できるだけ枝葉を広げて、光をたくさん受け取ろう」と進化してきました。

その結果として、主枝の葉の付け根からどんどん新しい芽を出し、太陽の光を受ける面積を増やそうとします。

これはいわば、自己増殖の本能。

脇芽も新たな枝として育ち、花を咲かせ、実をつけて子孫を残そうとする。

トマトの生きる戦略です。

でも、トマト農家の立場になると話は変わります。

脇芽をそのままにしておくと、葉ばかりが茂って風通しが悪くなり、病気のリスクが高まったり、主枝に回るべき養分が分散してしまったりして、結果として実のつきが悪くなります。

だから、栽培農家は“どの芽を育て、どの芽を取るか”を見極めながら、手を入れていく必要があります。

つまり、脇芽を取る作業とは、

「トマトの生きたい気持ち」と「おいしい実をつけてほしいという人間の願い」の間で、バランスを取ること

と言えます。

一方で、脇芽を摘んで捨てるのがもったいないと思う方も意外と多くて、取った脇芽を挿し木して育てることもできます。

トマトの生命力はそれだけたくましいです。

「なんでこんなに脇芽が出るのか」と思ったら、それはトマトが元気に生きてる証拠でもあります。

実際に苗を定植してからしっかり根付くと、主枝の伸びと合わせて脇芽もどんどん伸びてきます。

私たちはその生命力に向き合いながら、最適な樹形をつくる営みを、今日も行っています。

梶原耕藝 代表梶原甲亮(かじわらこうすけ)

1976年生まれ(43歳)。熊本県山都町在住。代々続く農家の7代目。九州大学法学部政治学科を卒業して熊本県庁に就職。子供が生まれ、食への関心が高まると共に「安心安全な食べ物を届けたい」「農業を夢のある仕事にしたい」という想いでUターン。現在、3兄弟の父親として日々学びながら農業を取り組んでいます!

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