2023.02.23|学習・研究
イチゴの篤農家による常識外の土づくり
畑の土の中は、数字では計れない無限の世界が広がっている。
あらためてそう思わざるを得ませんでした。
昨日、熊本県内の、とあるイチゴ農家の視察に行ってきました。
その方のつくるイチゴは、地元の百貨店やごく一部の小売店でしか手に入らない貴重なもの。
「うちでも取引させてほしい」という業者からのオファーや、なかにはテレビの取材依頼もあるそうですが、全てに対応できないし有名になりたくないからと、断っているそうです。
なので、私も場所やお名前を伏せて書いています。
農業高校を出て、数十年ひたすらイチゴづくりに邁進してきたその方のやり方は、通常の農業の常識では図れません。
「これ、食べてみな」
そう言って私がいただいたのは、まだ全然熟していない真っ白なイチゴ。
口に入れたら、完熟と勘違いするほどの甘みが乗っていました。
農家は土壌分析によって、畑の土壌の養分バランスを数値化して、堆肥や資材の投入量を決めるのが一般的ですが、その方は土壌分析はしません。
自分のこれまでの経験と勘で、どれくらい投入すれば良いのかを決めています。
土づくりができているので、通常ではありえないほどの堆肥を投入しても、過剰害が出ることもなく、きわめて高品質なイチゴをつくっています。
県の普及指導員や大学の先生などが見に来られることもあるそうですが、みな目を丸くしていると笑っておられました。
目には見えないけれど、この畑の土の中には、非常に強い力を持った微生物が宿っているのだろうと思います。
毎日、日が昇らないうちから畑に来て、イチゴのかすかな変化を察知してイチゴが欲しているものを理解し、その日使う資材を決める。
長年の自己研鑽や、経験と勘に裏打ちされた仕事で、誰よりも高い品質の農産物を産みだす農家のことを、篤農家と言うのでしょう。
トマトとイチゴは同じ果菜類ですが、イチゴは糖分が多いから果物に分類されています。
トマト、イチゴ関係なく、土づくりは本当に奥が深い世界だなと、心の底から思わされる一日でした。
梶原耕藝 代表梶原甲亮(かじわらこうすけ)
1976年生まれ(43歳)。熊本県山都町在住。代々続く農家の7代目。九州大学法学部政治学科を卒業して熊本県庁に就職。子供が生まれ、食への関心が高まると共に「安心安全な食べ物を届けたい」「農業を夢のある仕事にしたい」という想いでUターン。現在、3兄弟の父親として日々学びながら農業を取り組んでいます!
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